
大切な方に財産を残したい。でも、相続税が気になる…。そんなお悩みをお持ちの方へ、「死因贈与」という方法をご紹介します。遺言とは違った仕組みで、亡くなった後に財産を贈る約束を生前からすることができるのです。
契約を交わすことで確実に財産を渡せる反面、税金面では不利な点もあります。相続対策の選択肢の一つとして、死因贈与のメリットとデメリットを詳しく解説します。ご家族の将来のために、ぜひ参考にしてください。
- 1. 死因贈与とは - 4つの贈与方法の中の特別な形
- 1.1. 生前贈与、死因贈与、遺贈、相続の違い
- 2. 死因贈与の特徴と仕組み - 契約行為としての性質
- 2.1. 死因贈与契約の成立要件
- 2.2. 負担付死因贈与の特徴
- 3. 死因贈与のメリットとデメリット - 贈与者と受贈者の立場から
- 3.1. 贈与者にとってのメリットとデメリット
- 3.2. 受贈者にとってのメリットとデメリット
- 4. 遺贈との違い - 7つの重要なポイント比較
- 4.1. 契約の必要性と撤回の可能性
- 4.2. 契約の必要性と撤回の可能性
- 4.3. 税金面での違いと登記手続きの違い
- 5. 死因贈与を活用する際の注意点 - 契約書作成と執行者の指定
- 5.1. 死因贈与契約書の作成ポイント
- 5.2. 執行者の役割と指定の重要性
- 6. まとめ
死因贈与とは - 4つの贈与方法の中の特別な形
生前贈与、死因贈与、遺贈、相続の違い
財産を誰かに渡す方法は、大きく分けて4つあります。生前贈与、死因贈与、遺贈、そして相続です。
それぞれの特徴を簡単に説明しましょう。
生前贈与:生きている間に財産を渡す方法です。
死因贈与:亡くなった後に財産を渡すことを、生前に約束する方法です。
遺贈:遺言書で財産を誰かに渡すと指定する方法です。
相続:法律で決められた順序で、自動的に財産が引き継がれる方法です。
この中で、死因贈与は少し変わった位置にあります。
生前に相手と約束(契約)をしますが、実際に財産が動くのは亡くなった後なのです。
死因贈与の特徴と仕組み - 契約行為としての性質
死因贈与契約の成立要件
死因贈与は、贈与者と受贈者(財産をもらう人)の間で行われる契約です。
この契約が成立するために必要な要素は以下の通りです:
- 贈与者の意思表示:財産を贈与する意思を明確に示すこと
- 受贈者の承諾:贈与を受けることに同意すること
- 死亡を条件とすること:贈与者の死亡時に効力が発生することを明示すること
注目すべきは、書面による契約書は必須ではないということです。口頭での約束でも成立します。
ただし、後々のトラブルを避けるためには、必ず書面で残しておきましょう。
負担付死因贈与の特徴
死因贈与の中でも特殊な形として、「負担付死因贈与」があります。
これは、受贈者に何らかの義務や負担を課す形の死因贈与です。例えば:
- 贈与者の介護を条件に不動産を贈与する
- 贈与者の墓守りを条件に財産を贈与する
このような場合、受贈者が負担を履行し始めると、贈与者は一方的に契約を解除できなくなります。
これは受贈者の権利を守る重要な特徴です。
以上が死因贈与の基本的な特徴と仕組みです。次は、この方法のメリットとデメリットを詳しく見ていきましょう。
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死因贈与のメリットとデメリット - 贈与者と受贈者の立場から
贈与者にとってのメリットとデメリット
贈与者の立場から見た死因贈与のメリットとデメリットを整理しましょう。
贈与者のメリット
- 確実に財産を渡せる:契約なので、受贈者が一方的に放棄することはできません。
- 生前は財産を手元に置ける:実際の贈与は死後なので、生活に影響がありません。
- 柔軟な設計が可能:条件をつけるなど、細かい希望を反映できます。
贈与者のデメリット
- 撤回が難しい:特に負担付死因贈与の場合、一度始まると撤回できません。
- 家族間でもめる可能性:他の相続人との間でトラブルになることがあります。
- 税制面で不利な場合がある:特に不動産の贈与で、登録免許税が高くなることがあります。
受贈者にとってのメリットとデメリット
次に、受贈者の立場から見たメリットとデメリットです。
受贈者のメリット
- 確実に財産をもらえる:契約なので、贈与者の気が変わっても安心です。
- 生前から権利を守れる:不動産の場合、仮登記ができます。
- 条件付きでも権利が守られる:負担付き死因贈与の場合、履行後は撤回されません。。
受贈者のデメリット
- 税金面での負担:相続税だけでなく、場合によっては高額な登録免許税がかかります。
- 他の相続人との関係悪化:争いになる可能性があります。
- 遺留分の対象になる:法定相続人の遺留分を侵害すると、減額される可能性があります。
このように、死因贈与には両者にとってメリットとデメリットがあります。次は、よく比較される「遺贈」との違いを詳しく見ていきましょう。
遺贈との違い - 7つの重要なポイント比較
契約の必要性と撤回の可能性
死因贈与と遺贈は、似ているようで大きく異なる点があります。ここでは、特に重要な違いを7つのポイントで比較します。
*遺贈とは遺言で贈与をすることです。死因贈与と遺贈の主な違いは下記の説明をご覧ください。
契約の必要性と撤回の可能性
比較ポイント(1-4) | 死因贈与 | 遺贈 |
---|---|---|
1. 契約の必要性 | 贈与者と受贈者の合意(契約)が必要 | 遺言者の一方的な意思表示で成立 |
2. 効力の発生時期 | 贈与者の死亡時 | 遺言者の死亡時 |
3. 撤回の可能性 | 原則可能だが、負担付きの場合は制限あり | 遺言者の生存中はいつでも可能 |
4. 受け取る側の権利 | 契約なので、原則として放棄できない | 受遺者は受け取りを拒否できる |
この表では、死因贈与と遺贈の主要な違いを4つのポイントで比較しています。
特に契約の必要性、撤回の可能性、受け取る側の権利について、両者の違いが明確に示されています。
税金面での違いと登記手続きの違い
比較ポイント(5-7) | 死因贈与 | 遺贈 |
---|---|---|
5. 税金面での違い (不動産の登録免許税) | 一律2% | 法定相続人への遺贈:0.4% それ以外:2% |
6. 登記手続きの違い | 生前に仮登記が可能 | 生前の仮登記はできない |
7. 年齢制限 | 贈与者は原則18歳以上(契約行為) | 15歳以上から可能 |
この表では、死因贈与と遺贈の税金面での違い、登記手続きの違い、そして年齢制限の違いを比較しています。
(ただし未成年者でも親権者の同意があれば契約できるので、15歳以上しかできない遺贈に比べると対象者の範囲が広くなります。)
不動産の登録免許税に関しては、法定相続人への遺贈の場合に大きな差が出ることが分かります。
また、登記手続きや年齢制限においても、両者に明確な違いがあることが示されています。
死因贈与を活用する際の注意点 - 契約書作成と執行者の指定
死因贈与契約書の作成ポイント
死因贈与を行う際、契約書の作成は法律上必須ではありませんが、トラブル防止のために強くおすすめします。契約書作成時には、以下のポイントに注意しましょう。
- 明確な意思表示: 死因贈与であることを明記し、贈与者の意思を明確に示します。
- 贈与の対象: 贈与する財産を具体的に特定します。不動産なら所在地や面積など、預金なら金融機関名や口座番号などを記載します。
- 効力発生時期: 贈与者の死亡時に効力が生じることを明記します。
- 負担がある場合の記載: 負担付き死因贈与の場合、その内容を詳細に記載します。
- 日付と署名: 契約日を明記し、贈与者と受贈者の両方が署名・押印します。
- 証人の立会い: 法的には必須ではありませんが、第三者の証人を立てると、より確実になります。
さらに、公正証書で作成することも検討しましょう。死因贈与契約公正証書にすることで、契約の存在と内容が公的に証明され、より確実性が高まります。
外部リンク:「日本公証人連合会」 公正証書について
執行者の役割と指定の重要性
死因贈与契約で執行者を指定することは、非常に重要です。執行者の役割と指定の意義を見ていきましょう。
執行者の役割
- 贈与の対象となる財産を受贈者に引き渡す
- 不動産の場合、所有権移転登記の手続きを行う
- 他の相続人との調整を行う
執行者指定の重要性
- スムーズな財産移転: 執行者がいることで、贈与の実行がスムーズになります
- 不動産の登記手続き:執行者と受贈者だけで登記手続きができます。
- トラブル防止: 他の相続人との間で生じる可能性のあるトラブルを未然に防ぎます。
- 執行者の選び方: 信頼できる人物を選びましょう。法律や手続きに詳しい人(弁護士や司法書士など)を指定するのも良いでしょう。受贈者自身を執行者に指定することも可能です。
執行者を指定する場合は、契約書にその旨を明記し、執行者の同意を得ておくことが大切です。 以上のポイントに注意して死因贈与を活用すれば、より確実に、そしてスムーズに財産を引き継ぐことができるでしょう。
最後に、死因贈与の全体像をまとめてみましょう。
まとめ
死因贈与は、相続対策の一つの選択肢として重要な位置を占めています。
ここで、これまでの内容を振り返りながら、死因贈与の特徴と活用方法をまとめましょう。
死因贈与を検討する際は、自身の状況や希望をよく考え、行政書士や弁護士、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
また、家族間でよく話し合い、理解を得ることも大切です。 相続対策は一つの方法だけでなく、様々な選択肢を組み合わせることで、より効果的になります。死因贈与はその中の重要な選択肢の一つです。
ご自身やご家族の将来のために、十分に検討し、最適な方法を選んでいただければと思います。
