【建設業許可】はじめての経管 (経営業務の管理責任者)|個人事業主が知っておきたい3つのパターン

建設業許可の取得において、経営管理責任者の要件を満たすことは最も重要なポイントの一つです。令和2年10月の建設業法改正により、経営業務の管理責任者要件が緩和され、より柔軟な体制、具体的にはチームでの申請が可能になりました。本記事では横須賀・横浜エリアはじめて建設業許可申請を考えている事業主様に向けて、経営管理責任者の要件と実務のポイントをスッキリ解説します。

この記事を読むと分かること

  • 経営業務管理責任者の基本的な役割と条件
  • 緩和された最新の要件(軽く触れます)
  • 常勤性の証明方法と必要書類の一例
  • 実務経験の計算方法と証明手続き
  • 申請時の具体的な準備の進め方

経営業務の管理責任者(経管)って何故、必要なの?

建設業の許可を取るには、「経営業務管理責任者」(略して経管)を必ず営業所に置かなければなりません

大きなお金が動く建設業界ではお客様が安心して工事を発注できるように、許可の要件として「適正な経営体制」があることが求められています。簡単に言うと「ちゃんとした会社」かどうかを確認して大きな工事を受けられるようにする仕組みです。

なので、事業主様もご存知の通り、建設許可を持っていない会社は、軽微な工事(500万以下)しか受けれないのです。

建設業許可の要件である「経管」は会社の中心となりお金のや人の管理、他、経営全般を見ることが出来る経営のプロでなければなりません。

具体的には、次の三つの要素を備えていなければいけません。

経管の3要素

  • 会社のお金の管理(財務管理
    工事に必要な資金を確保し、材料を買い、無事に工事を完成させるまでの流れを見られる人。
  • 職人さんたち勤怠管理や社保管理(労務管理
    現場での勤怠管理や、給与の計算、社会保険の手続きなど事務的な手続きができる人。
  • 元請けとの契約など会社の運営(業務運営
    単なる現場監督や工事の責任者ではなく、会社全体の運営に関わる重要な立場で働いていた経験。

そして、これらの要素を過去5年の間クリアしているかを、書類等を用いて証明しなくてはなりません。
次に、この経管として認められている6つのパターンを紹介します。

経営業務の管理責任者になるための
6つの”パターン

建設業許可における経営業務の管理責任者の要件は、2020年の建設業法改正により大きく変更されました。

従来は1人の常勤役員が単独で要件を満たす必要がありましたが、改正後は補佐役とのチーム体制による経営管理も認められるようになりました。また、建設業以外の業界での役員経験も資格要件として考慮されるようになり、より柔軟な体制が可能になっています。

経営管理責任者の要件は、大きく
「規則イ」「規則ロ」に分かれています。

  1. 「規則イ」は建設業の経営者またはそれに準ずる者として5年以上のキャリアを持つ場合
  2. 「規則ロ」は建設業での経験が5年未満でも、他業種での経験や補佐役の存在によって要件を満たす場合です。

この記事では、特に個人事業主の方々向けに規則イの要件に基づいて申請されるケースを中心に説明を進めます

根拠法令要件
規則イ(1) 建設業に関し、5年以上経営業務の管理責任者(以下「経管」という。)としての経験を有する者
規則イ(2)建設業に関し、5年以上経管に準ずる地位(経営業務を執行する権限の委任を受けた執行役員)にある者として、経営業務を管理した経験を有する者
規則イ(3)建設業に関し、6年以上経管に準ずる地位にある者として、経管を補助する業務に従事した経験(補佐経験)を有する者
規則ロ(1)・建設業に関する2年の役員等としての経験を含む、5年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者としての経験を有する者(建設業に関する財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当する者)

・上記常勤役員等を直接に補佐する者(以下「補佐者」という。)として、次の全ての者を置くこと。(一人でも可)
  a. 建設業の財務管理の業務経験5年を有する者
  b. 建設業の労務管理の業務経験5年を有する者
  C. 建設業の業務運営の業務経験5年を有する者
規則ロ(2)・建設業に関する2年の役員等としての経験を含む、5年以上役員等(建設業以外を含む)としての経験を有する者

上記の常勤役員等を直接に補佐する者(以下「補佐者」という。)として、次の全ての者を置くこと。(一人でも可)
  a. 建設業の財務管理の業務経験5年を有する者
  b. 建設業の労務管理の業務経験5年を有する者
  C. 建設業の業務運営の業務経験5年を有する者
規則ハその他、国土交通大臣が個別の申請に基づき認めた者

【規則イ(1)】 建設業に関し、5年以上経管としての経験を有する者

経営管理責任者(経管)になるための最も一般的な方法は、以下のように建設業許可を取得しようとする本人が経管になるパターンが考えられます。

経営経験の例

  • 個人事業主として5年以上建設業を営んでいた
  • 以前の会社で5年以上役員をしていた

経験要件については、個人事業主としての経験が最もシンプルな証明となります。

一方、他社での役員経験を要件として申請する場合は、その経験を証明する書類が必要となります。例えば、以前の会社での取締役としての経験を証明するためには、その会社から5年間役員をしていたことを証明する書類をもらえるかがポイントです。

【規則イ(2)】建設業に関し、5年以上「執行役員等」として経営業務を管理した経験を有する者

役員ではないものの、会社から経営の権限を正式に任されている立場(執行役員など)として5年以上働いた経験がある場合に使える方法です。この場合、会社から経験を裏付ける書類がもらえるかがポイントになります。

経営経験の例

  • 大手建設会社で執行役員として5年働いていた
  • 建設会社の営業所長として実質的な経営判断を任されていた

【規則イ(3)】建設業に関し、6年以上経管に準ずる地位にある者として、経管を補助する業務に従事した経験(補佐経験)を有する者

経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者とは具体的には以下のような人を指しています。

経営経験の例

  • 建設会社で社長直属の部長として6年働いていた
  • 個人事業主の専従者(配偶者や子供)として6年以上経営を補佐していた

令和2年に追加されたパターン

【規則ロ(1)】チーム体制での申請

建設業での役員経験が2年以上あり、さらに役員かそれに近い立場での経験が合計5年以上ある場合に、補佐役3人(財務・労務・業務運営の専門家)と組んで申請する方法です。

【規則ロ(2)】他業種での経験も活かせる方法

建設業で2年以上の役員経験があれば、他の業種での役員経験と合わせて5年以上あれば認められます。建設業にこだわらず、幅広い経験を活かせる方法です。こちらについても「ロ(1)」と同様に、補佐役3人(財務・労務・業務運営の専門家)をつけなくてはいけません。

【規則ハ】特別認定による方法

一般的な要件には当てはまらないけれど、特別な事情がある場合に、国土交通大臣に個別に申請して認めてもらう方法です。海外での経験なども、この方法で認められる可能性があります。

経営管理責任者(経管)の要件は複数の選択肢があり、申請者の経歴や状況に応じて最適な方法を選ぶことができます。ただし、選択した要件によっては、必要な証明書類の準備や証明方法が複雑になる場合があります

例えば、過去の役員経験を証明する場合は、在任証明書の入手や経営実務経験の具体的な証明が必要となります。このような手続きの複雑さを考慮すると、申請方法の選択や必要書類の準備について不安がある場合は、建設業許可申請の実務に精通した行政書士に相談することをお勧めします。

経営業務管理責任者に関する確認資料

建設業許可を申請する場合、経営業務の管理責任者の確認資料を提出する必要があります。

申請にあたっては、役員の常勤性を証明する書類と、役職名および経験年数を証明する書類二種類を提出する必要があります。

経管の確認資料

(1)現在常勤であること及び現在の地位の確認資料
(2)過去の経営経験等を裏付ける確認資料 (更新申請の場合は添付不要)

建設業許可における経営管理責任者の常勤性証明:必要書類と注意点

経管になる役員が実際に常勤で働いていることを証明するには、公的機関が発行する書類が必要です。
具体的な証明書類としては、健康保険と厚生年金に関する書類が代表的です。

注意すべき点として、健康保険証に記載されている会社名が申請会社と異なる場合、常勤性は認められません。これは、他社での勤務が主であることを示唆するためです。このような場合、申請会社での常勤性が否定され、建設業許可の取得に支障をきたす可能性があります。

証明書類の例

個人の場合

  • 健康保険被保険者証のコピー
  • 健康保険被保険者資格証明書交付申請書および資格証明書のコピー
  • 建設業国民健康保険加入証明書の原本
  • 直近の健康保険・厚生年金の被保険者標準報酬決定通知書または資格取得確認書のコピー
  • 直近の住民税特別徴収税額通知書のコピー

法人の場合

  • 直前決算の法人税確定申告書表紙と役員報酬等内訳書のコピー
  • 個人事業主の場合:所得税確定申告書B(第一表・第二表)と青色申告決算書のコピー
  • 個人事業主の場合:所得税確定申告書Bと収支内訳書のコピー

    確定申告書類で常勤性を証明する場合、役員報酬または給与の年額が130万円以上であることが要件となります。

*経管の常勤性って何?

建設業の許可申請において、経営業務管理責任者は会社の営業所で「常勤」することが求められています

常勤とは、その営業所の通常の営業時間内において、実際にその場所で業務に従事している状態を指します。例えば、週40時間の勤務時間中、本社や本店などの営業所に常駐して経営管理の職務を行うことが該当します。

以下のようなケースでは、常勤とは認められない可能性があります。

経管の要件を満たさないとされるケース

営業所との住居が遠い

建設業許可申請において、経営管理責任者の居住地と営業所との距離は、常勤性を判断する重要な要素となります。具体的な時間は行政単位で異なりますが、通勤時間が概ね2時間を超える場合や、営業所とは異なる都道府県に居住している場合には、日常的な通勤が現実的に困難とされ常勤性が認められない可能性があります。

他社での役職の兼任制限

また、他社で経管や専任技術者として従事している方も、常勤性は認められません。同様に、他社の代表取締役(一人代表)や常勤役員、個人事業主として活動している場合も対象外となります。

他社での経営職との兼任制限

さらに、建築士事務所の管理建築士や宅地建物取引業者の専任取引士など、法令で専任が求められる職務に就いている場合も常勤性は認められません。ただし、同一企業の同一営業所内であれば、これらの職務との兼任は可能です。

報酬が極端に安い場合

経営管理責任者(経管)には、その役割と責任に見合った適切な報酬を設定する必要があります。極端に低い報酬(例:月額5万円程度)で経管を選任する場合、実質的な経営管理業務を行っていないとみなされ(常勤性の否定)、いわゆる「名義貸し」として許可申請が認められない可能性があります。

この記事のまとめ

経営業務の管理責任者(経管)は建設業許可に不可欠。財務管理、労務管理、業務運営の3つの要素における5年間の経験証明が必要です。2020年の法改正で、従来の単独要件に加え、補佐役とのチーム体制による経営管理も可能になりました。

経管になるには建設業での5年以上の経験や、建設業2年を含む他業種での経験と補佐役によるチーム体制など、複数の認定パターンがあります。ただし、常勤性が求められ、営業所との距離が遠い場合や他社での役職との兼任は認められません。申請には常勤性と経験を証明する書類が必要で、都道府県により要件が異なるため、専門家への相談をお勧めします。

私たちは建設業の許可申請に力を入れている神奈川県逗子市の行政書士事務所です。
生まれ育った横須賀、横浜で建設業許可取得を考えている事業主様を精一杯サポートさせていただきます。

申請内容に応じた
報酬額の基準

申請内容の複雑さや必要書類の状況により、報酬額は異なります。
以下の3つの代表的なケースをご参考ください。

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