
建設業を営むなかで「より大きな工事を受注したい、公共工事に参入したい」と、考える横須賀の個人事業主の方は多いでしょう。しかし、建設業許可の種類は29種類もあり、どの許可を取得すべきか迷ってしまうことも少なくありません。
この記事では、現場で実際に工事を手がける方の目線で、建設業許可の種類とその選び方について解説します。特に土木・建築一式工事と専門工事の違いに焦点を当て、具体的な工事内容に応じてどの許可が必要になるのか、実例を交えながら説明していきます。
「一式工事」と「専門工事」の違いって何?
建設工事を請け負うためには、工事の内容に応じた建設業許可が必要です。許可の種類は大きく「一式工事」と「専門工事」の2種類に分かれています。
「一式工事」これは住宅やビル全体を建てる「建築一式工事」や、道路やダムを作る「土木一式工事」のことです。この許可は
「専門工事」これは大工さんの仕事や左官さんの仕事など、建設現場での専門的な技術に応じて27種類に分かれています。
ここで大切なのは、自分の得意分野や実績に合った許可を選ぶこと。例えば、これまで水道工事を中心にやってきた方が、いきなり大きなビル全体を建てる許可を取ろうとしても、工事の実績や、専任技術者の要件が難しいでしょう。
まずは、これまでの経験を活かせる分野から始めるのがおすすめです。
なぜ建設業界に「下請け」が必要なの?
「一式工事」の特徴から読み解く建設業界の仕組み〜
建設現場で働く人なら誰でも経験があると思いますが、建設の仕事って「今月はたくさん仕事があるのに、来月はどうなるかわからない」というのが当たり前ですよね。
実は、この不安定さを解決するために、建設業界では「下請け」という仕組みが発展してきました。例えば、ある会社が住宅を建てる工事を請け負ったとします。その会社が電気工事の専門家から大工さん、左官屋さんまで全員を正社員として雇っていたら、仕事が少ない月でも給料を払い続けなければなりません。
そこで一般的なのが、工事の内容に応じて必要な職人さんや専門業者さんに協力してもらう「下請け」という方法です。これにより、その工事に必要な技術を持つプロの力を必要な時に借りることができ、発注者の要望にも柔軟に応えられるようになります。

建築一式工事業
建築物の建設工事を総合的に請け負います。住宅建設、店舗建設、ビル建設などが該当します。
土木一式工事業
土木構造物を建設する工事を総合的に請け負います。道路工事、河川工事、港湾工事などが該当します。
「一式工事」とは、建設工事全体を取りまとめる総合的な工事のことです。工事全体を企画し、技術的な指導を行いながら、工程を調整していく重要な役割を担います。たとえば建築一式工事では、基礎工事から内装工事まで、建物を完成させるために必要なすべての工事を管理します。一式工事の施工方法には2つの選択肢があります。
- 自社の技術者が各専門工事を直接施工する方法。
- 各専門工事の許可を持つ業者に下請けとして工事を依頼する方法です。
1つ目の自社施工の場合は、大工工事、左官工事、電気工事など、それぞれの工事分野に専任の技術者を配置する必要があります。これには相当な人件費と経営体力が求められるため、中小規模の建設会社にとってはハードルが高いと言えます。そのため、多くの中小建設会社では、信頼できる専門工事業者と協力関係を築き、必要な工事を下請け発注する2つ目の方法を選んでいます。これにより、経営の柔軟性を保ちながら、質の高い工事を実現することができます。
建設業許可業種「専門工事」のしくみを理解する
大きな建物が完成するまでには、様々な職人さんの技術が必要不可欠です。そこで建設業法では、それぞれの専門技術を「専門工事」として27の分野に区分しています。
例えば、木造建築の要となる大工工事。これは単に木材を組み立てるだけではありません。木の特性を理解し、建物の構造を熟知した上で、精密な加工や建具の取付けまでを担当する専門性の高い仕事です。また、建物の表情を決める左官工事では、モルタルや漆喰を使って、美しく、かつ耐久性のある壁の仕上げを実現します。
特に安全面で重要なのが、とび・土工工事です。高所作業の足場設置から重量物の安全な運搬まで、建設現場の安全を根底から支えているのです。これらの専門工事は、それぞれが固有の技術と経験を必要とする、建設業界の重要な柱となります。
このように専門工事の区分は、ただの分類ではありません。
長年培われてきた技術と経験により、安全で質の高い建設工事を実現するための、大切な仕組みとして機能しているのです。
一式工事と専門工事の関係を知る - 許可申請の注意点
建設業許可の申請を考えているけれど、「一式工事と専門工事の関係って、実はよくわからない」という声をよく聞きます。
確かに、この部分は多くの方が混乱しやすいポイントです。
例えば建築一式工事の許可を持っている会社が、「今回は水道工事だけを500万円で請け負いたい」と考えたとします。このとき、建築一式工事の許可だけもっていても請け負うことは出来ません。建築一式工事と聞くと全て網羅しているように聞こえますが、下請けとして請け負うのであれば、別途「管工事業」の許可が必要になります。法律上、これらは全く別の業種として扱われているからなんです。
建設業許可「全29業種」一覧表|工事内容と例示つき
# | 建設工事の種類 | 建設業の業種 | 建設工事の内容 | 建設工事の例示 |
---|---|---|---|---|
1 | 土木一式工事 | 土木工事業 | 総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事(補修、改造又は解体する工事を含む。以下同じ。) | |
2 | 建築一式工事 | 建築工事業 | 総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事 | |
3 | 大工工事 | 大工工事業 | 木材の加工又は取付けにより工作物を造作し、又は工作物に木製設備を取付ける工事 | 大工工事、型枠工事、造作工事 |
4 | 左官工事 | 左官工事業 | 工作物に壁土、モルタル、漆くい、プラスター、繊維等をこて塗り、吹付け、又ははり付ける工事 | 左官工事、モルタル工事、モルタル防水工事、吹付け工事、とぎ出し工事、洗い出し工事 |
5 | とび・土工・コンクリート工事 | とび・土工工事業 | イ.足場の組立て、機械器具・建設資材等の重量物のクレーン等による運搬配置、鉄骨等の組立てを行う工事 ロ.くい打ち、くい抜き及び場所打ちくいを行う工事 ハ.土砂等の掘削、盛土、締固め等を行う工事 ニ.コンクリートにより工作物を造造する工事 ホ.その他基礎的ないし準備的工事 | イ.とび工事、ひき工事、足場等仮設工事、重量物のクレーン等による運搬配置工事、鉄骨組立工事、コンクリートブロック据付け工事 ロ.くい工事、くい打ち工事、場所打ちくい工事 ハ.土工事、掘削工事、根切り工事、発破工事、盛土工事 ニ.コンクリート工事、コンクリート打設工事、コンクリート圧送工事、プレストレストコンクリート工事 ホ.地すべり防止工事、地盤改良工事、ボーリンググラウト工事、土留め工事、仮締切り工事、吹付け工事、法面保護工事、道路付属物設置工事、捨石工事、外構工事、はつり工事、切断穿孔工事、アンカー工事、あと施工アンカー工事、潜水工事 |
6 | 石工事 | 石工事業 | 石材(石材に類似のコンクリートブロック及び擬石を含む。)の加工又は積方により工作物を築造し、又は工作物に石材を取付ける工事 | 石積み(張り)工事、コンクリートブロック積み(張り)工事 |
7 | 屋根工事 | 屋根工事業 | 瓦、スレート、金属薄板等により屋根をふく工事 | 屋根ふき工事 |
8 | 電気工事 | 電気工事業 | 発電設備、受電設備、送配電設備、構内電気設備等を設置する工事 | 発電設備工事、送配電設備工事、引込線工事、受電設備工事、構内電気設備(非常用電気設備を含む。)工事、照明設備工事、電力設備工事、自家用発電設備工事、ネオン設置工事 |
9 | 管工事 | 管工事業 | 冷暖房、冷凍冷蔵、空気調和、給排水、衛生等のための設備を設置し、又は金属製等の管を使用して水、油、ガス、水蒸気等を送配するための設備を設置する工事 | 冷暖房設備工事、冷凍冷蔵設備工事、空気調和設備工事、給排水・給湯設備工事、厨房設備工事、衛生設備工事、浄化槽工事、水洗便所設備工事、ガス管配管工事、ダクト工事、管内更正工事 |
10 | タイル・れんが・ブロック工事 | タイル・れんが・ブロック工事業 | れんが、コンクリートブロック等により工作物を築造し、又は工作物にれんが、コンクリートブロック、タイルを取付け、又ははり付ける工事 | コンクリートブロック積み(張り)工事、レンガ積み(張り)工事、タイル張り工事、築炉工事、スレート張り工事、サイディング工事 |
11 | 鋼構造物工事 | 鋼構造物工事業 | 形鋼、鋼板等の鋼材の加工又は組立てにより工作物を築造する工事 | 鉄骨工事、橋梁工事、鉄塔工事、石油、ガス等の貯蔵用タンク設置工事、屋外広告工事、門扉、水門等の門扉設置工事 |
12 | 鉄筋工事 | 鉄筋工事業 | 棒鋼等の鋼材を加工し、接合し、又は組立てる工事 | 鉄筋加工組立て工事、鉄筋継手工事 |
13 | 舗装工事 | 舗装工事業 | 道路等の地盤面をアスファルト、コンクリート、砂、砂利、砕石等により舗装する工事 | アスファルト舗装工事、コンクリート舗装工事、ブロック舗装工事、路盤築造工事 |
14 | しゅんせつ工事 | しゅんせつ工事業 | 河川、港湾等の水底をしゅんせつする工事 | しゅんせつ工事 |
15 | 板金工事 | 板金工事業 | 金属薄板等を加工して工作物に取付け、又は工作物に金属製等の屋根を取付ける工事 | 板金加工取付け工事、建築板金工事 |
16 | ガラス工事 | ガラス工事業 | 工作物にガラスを加工して取付ける工事 | ガラス加工取付け工事 |
17 | 塗装工事 | 塗装工事業 | 塗料、塗材等を工作物に吹付け、塗付け、又ははり付ける工事 | 塗装工事、溶射工事、ライニング工事、布張り仕上工事、鋼構造物塗装工事、路面標示工事 |
18 | 防水工事 | 防水工事業 | アスファルト、モルタル、シーリング材等により防水を行う工事 | アスファルト防水工事、モルタル防水工事、シーリング工事、塗膜防水工事、シート防水工事、注入防水工事 |
19 | 内装仕上工事 | 内装仕上工事業 | 木材、石膏ボード、吸音板、壁紙、たたみ、ビニール床タイル、カーペット、ふすま等を用いて建築物の内装仕上げを行う工事 | インテリア工事、天井仕上工事、壁張り工事、内装間仕切り工事、床仕上工事、たたみ工事、ふすま工事、家具工事、防音工事 |
20 | 機械器具設置工事 | 機械器具設置工事業 | 機械器具の組立て等により工作物を建設し、又は工作物に機械器具を取付ける工事 | プラント設備工事、運搬機器設置工事、内燃力発電設備工事、集塵機器設置工事、給排水機器設置工事、ダム用仮設備工事、遊戯施設設置工事、舞台装置設置工事、サイロ設置工事、立体駐車設置工事 |
21 | 熱絶縁工事 | 熱絶縁工事業 | 工作物又は工作物の設備を熱絶縁する工事 | 冷暖房設備、冷凍冷蔵設備、動力設備又は燃料工業、化学工業等の設備の熱絶縁工事、ウレタン吹付け断熱工事 |
22 | 電気通信工事 | 電気通信工事業 | 有線電気通信設備、無線電気通信設備、ネットワーク設備、情報設備、放送機械設備等の電気通信設備を設置する工事 | 有線電気通信設備工事、無線電気通信設備工事、データ通信設備工事、情報処理設備工事、情報収集設備工事、情報表示設備工事、放送機械設備工事、TV電波障害防除設備工事 |
23 | 造園工事 | 造園工事業 | 整地、植木の植栽、景石のすえ付け等により庭園、公園、緑地等の苑地を造成し、道路、建築物の屋上等を緑化し、又は植生を復元する工事 | 植栽工事、地被工事、景石工事、地ごしらえ工事、公園設備工事、広場工事、園路工事、水景工事、屋上等緑化工事、緑地育成工事 |
24 | さく井工事 | さく井工事業 | さく井機械等を用いてさく孔、さく井を行う工事又はこれらの工事に伴う揚水設備設置等を行う工事 | さく井工事、観測井工事、還元井工事、温泉掘削工事、井戸築造工事、さく孔工事、石油掘削工事、天然ガス掘削工事、揚水設備工事 |
25 | 建具工事 | 建具工事業 | 工作物に木製又は金属製の建具等を取付ける工事 | 金属製建具取付け工事、サッシ取付け工事、金属製カーテンウォール取付け工事、シャッター取付け工事、自動ドア-取付け工事、木製建具取付け工事、ふすま工事 |
26 | 水道施設工事 | 水道施設工事業 | 上水道、工業用水道などのための取水、浄水、配水等の施設を設置する工事又は公共下水道若しくは流域下水道の処理施設を設置する工事 | 取水施設工事、浄水施設工事、配水施設工事、下水処理設備工事 |
27 | 消防施設工事 | 消防施設工事業 | 火災警報設備、消火設備、避難設備若しくは消火活動に必要な設備を設置し、又は工作物に取付ける工事 | 屋内消火栓設置工事、スプリンクラー設置工事、水噴霧、泡、不燃ガス、蒸発性液体又は粉末による消火設備工事、屋外消火栓設置工事、動力消防ポンプ設置工事、火災報知設備工事、漏電火災警報器設置工事、非常警報設置工事、金属製避難はしご、救助袋、緩降機、避難橋又は排煙設備の設置工事 |
28 | 清掃施設工事 | 清掃施設工事業 | し尿処理施設又はごみ処理施設を設置する工事 | ごみ処理施設工事、し尿処理施設工事 |
29 | 解体工事 | 解体工事業 | 工作物の解体を行う工事 | 工作物解体工事 |
出典:国土交通省|中部地方整備局建設業許可の業種区分|https://www.cbr.mlit.go.jp/kensei/info/qa/pdf/h3006_shiryo_01_gyosyu.pdf
建設業許可取得後の成長戦略 〜公共工事参入から人材確保まで〜
1. 経営事項審査の受審
建設業許可を取得したら、事業をさらに大きく発展させるチャンスが広がります。特に公共工事に参加するためには、経営事項審査(経審)という審査を受ける必要があります。これは会社の経営状況や技術力を評価するもので、入札参加の基準となります。
2. 技術者の育成・確保(建設キャリアップシステムの導入)
事業を継続的に成長させるためには、技術者の確保も重要です。建設キャリアアップシステム (CCUS)を活用すると、現場で働く技能者一人一人の経験やスキルを証明できるようになります。このシステムは、将来的に会社の信頼性を高めることにもつながります。
3. 施工実績の蓄積と経審のポイントアップ・
工事実績を着実に積み重ねることで、会社の信用は上がり、より大きな案件を受注できる可能性が広がります。また、経審を受けていれば工事実績に応じ経審ポイントもあがることで、大きな公共事業を落札する可能性も高まります。
4. 外国人材の活用
近年では人手不足への対応として、外国人材の採用も選択肢の一つとなっています。ただし、外国人を雇用する際は、在留資格や労働条件など、守るべきルールがありますので、国際業務を専門にしている行政書士に相談することをお勧めします。
まとめ:建設業許可取得への第一歩
建設業許可29種類の中から、自社に適した許可を選ぶためのポイントをまとめました。特に個人事業主の方は、以下の点を意識することをお勧めします:
- 現在の主力工事に対応する許可の取得
- 工事規模や内容に応じた段階的な許可の取得
- 経営体制の整備と技術者の確保
大切なのは「今できること」と「将来やりたいこと」のバランスです。技術者の確保や経営状況など、現実的な条件を踏まえながら、一歩一歩着実に進んでいき、大きな成功に繋がることを願っています。
具体的な許可申請の手続きや詳細な要件については、横須賀・横浜エリアの建設業許可に強い私たちへ下記のフォームからお気軽にお問い合わせください。

申請内容に応じた
報酬額の基準
申請内容の複雑さや必要書類の状況により、報酬額は異なります。
以下の3つの代表的なケースをご参考ください。
